ベトナムの教育セクターは、東南アジアにおける変革的成長の最前線に立っており、外国投資家にとって非常に魅力的な市場を形成しています。人口は1億人を超え、2030年までにそのうち約23%が35歳未満になるとESCAPは予測しており、政府も教育を経済近代化の柱として強く位置づけています。その結果、初等中等教育(K-12)、高等教育、職業訓練、EdTech(教育テクノロジー)など、さまざまな分野で需要が高まっています。急速な都市化と中間層の拡大により可処分所得が増加し、私立学校やインターナショナルスクールへの入学率も加速しています。
これらの要素が相まって、教育分野は成長およびパートナーシップの機会を求める外国投資家にとって非常に魅力的な投資先となっています。

ベトナムの教育セクターの動向と成長軌道

ベトナムの教育セクター概要

ベトナム教育訓練省(MOET)によると、2023〜2024年度におけるベトナムの全教育レベルにおける学生数は、約2,560万人にのぼります。
中でも最多は初等教育(小学校)で、880万人以上が在籍しています。次いで下級中等教育(中学校)が650万人、就学前教育(幼稚園・保育園)が480万人となっています。

参照: Vietnam’s Ministry of Education and Training

就学前教育および初等教育は、ベトナム国内で最も学校数が多い教育レベルであり、それぞれ全国に13,000校以上の教育機関が存在します。これらの幼稚園・保育園の大多数は公立であり、公立施設は11,000校以上にのぼります。高等教育では、全国に243の大学があり、そのうち176校が公立大学、67校が非公立(私立)大学です。

参照: Vietnam’s Ministry of Education and Training

(※)注:ベトナムにおける「総合学校」には複数の段階があります。(1)「基礎総合学校」とは、小学校と下級中等教育(中学校)を統合した学校です。(2)「中等学校」とは、下級中等教育と上級中等教育(高校)を統合した学校です(リンク参照)。

ベトナム教育訓練省によると、2023〜2024学年度末時点で、ベトナム全国の教員数は合計1,251,377人にのぼります。このうち、公立学校で勤務している教員は1,102,818人、非公立(私立)教育機関に勤務する教員は148,559人です。2022〜2023学年度と比較して、就学前教育および初等中等教育レベルにおける教員数は17,253人増加しました。しかし、ベトナムでは依然として深刻な教員不足が続いており、特に就学前教育および初等中等教育分野では、2025年5月時点で約12万人のポジションが未充足のままです。就学前教育および初等教育は生徒数が多いため、それぞれ35万人以上の教員が在籍しており、教員数も最も多くなっています。
大学教育(高等教育)レベルでは講師数が84,031人であり、そのうち60,009人が非公立教育機関に所属しており、高等教育は非公立講師数が最も多い教育レベルとなっています。

参照: Vietnam’s Ministry of Education and Training

成長の軌道と主要な推進要因

ベトナムの教育セクターは現在、大きな変革期を迎えており、その背景には、質の高い教育に対する社会的な需要の高まり、政府による意欲的な改革、そして国際競争力を意識した明確なビジョンの存在があります。2024年12月31日に公布された首相決定第1705/QD-TTg号に基づき、ベトナム政府は「2030年までの教育開発戦略(2045年を見据えた方向性を含む)」を正式に始動しました。この戦略の大きな目標は、2030年までにベトナムの教育制度をアジア先進国の水準へ引き上げ、2045年には国際的な基準に達することです。2025年という重要な節目を迎える中で、教育セクターは近代化と国際統合を一層加速させ、ベトナムの長期的な社会経済発展に向けた確固たる基盤を築いていくことになります。

成長を支える主な要因:

  • 好調な人口動態:高校年齢層に相当する人口は2,450万人にのぼり、2030年までに0.6%の成長が予測されています。これにより教育需要が急増しています。

  • 中間層の拡大:都市化と所得の増加により、特に私立校やインターナショナルスクールへの質の高い教育へのニーズが高まっています。

  • 高等教育のアクセス拡大、質の向上、国際化の推進:首相決定第452/QĐ-TTg号(2021〜2030年の高等教育・教育系機関ネットワーク計画、2050年を見据えたビジョン)に基づき、ベトナムの高等教育セクターは大きな変革を遂げています。

    • 拡大政策:ベトナムは高等教育へのアクセスを急速に拡大しており、2030年までに大学生300万人以上の在籍を目指しています。また、公立70%、私立30%という多様性のある教育制度への転換も目標としています。

    • 質の向上:大学制度の再構築を進め、効率性を高めるとともに、STEM(理工系)、医療科学、教員養成分野への重点投資を進めています。現在、ベトナムでは人口1万人あたり約55人のSTEM学生が在籍しており、高等教育の入学者の30%を占めています。2030年までに全教育段階で35%の学生がSTEM分野に進学することが期待されており、その中には基礎科学で少なくとも2.5%、デジタル技術分野で18%が含まれる見通しです。
    • 国際化の推進:グローバル統合はベトナムの高等教育改革の中心テーマです。政府は外国大学の分校設立や国際的な学術連携の促進を積極的に推進しています。
  • EdTechブーム:ベトナムのオンライン教育市場は30億ドル規模に達し、MindX、Prep、NativeXといった有力スタートアップが大規模な資金調達に成功しています。この急成長は、若くテクノロジーに精通した人口、広範なインターネット普及、AIやARを活用した個別最適型学習への需要拡大によって支えられています。

外国投資の動向

ベトナムの教育セクターは、好意的な政策、税制優遇措置、そして国際化への政府の強いコミットメントに支えられ、外国投資家にとってますます魅力的な市場となっています。ベトナム財務省傘下の外国投資庁によると、2025年2月末時点で、教育分野における外国直接投資(FDI)プロジェクトは707件に達し、登録資本金の総額は約46億4,000万米ドルに上ります。

外国投資に関する規制枠組みは、2024年11月20日に施行された政令124/2024/ND-CPにより大幅に強化されました。この政令は、国際学校および高等教育機関における外国資本の所有制限、ライセンス要件、資本要件、カリキュラム基準を見直すものであり、パートナーシップの機会を拡大する一方で、教育の質と透明性に関する規制も強化されています。

主なポイントは以下の通りです:

 

  • 行政手続きの簡素化:政令86/2018/ND-CPで定められていた21の申請様式のうち、14件を簡素化。オンラインでの申請や、政府機関間でのデータ共有が可能に。

  • 投資コミットメント:外国投資家は、運営ライセンス取得後5年以内に、総投資額の少なくとも50%を実行することが義務付けられています。

  • 透明性の強化:教育プログラム、外国人教員、学生構成などの情報を教育機関の公式ウェブサイトで公開することが義務化。

  • 外国教育機関との連携拡大および品質要件の強化

    • ベトナムの幼稚園やK-12学校は、これまでの外国の学校だけでなく、教育関連機関や団体とも連携が可能に。

    • 外国パートナーは、法的に設立され、5年以上運営されており、公的に認定された教育品質を有している必要があります。

    • 過去3年間で世界大学ランキング上位500位以内にランクインした外国大学のみが、ベトナムに分校を設立可能。最低投資額は5,000億VND(約2,000万米ドル)、そのうち少なくとも50%は審査時点で実行済みであることが求められます。

    • 外資系教育機関は、自国で認定された教育プログラムを提供し、それが5年以上運営されている必要があります。

    • 外国人教員は、少なくとも大学卒以上またはそれと同等の資格を有している必要があります。

外国投資家は、グリーンフィールド投資(ゼロからの新規開設)、合弁事業、M&A(合併・買収)など、複数の参入手段を選択できます。
ベトナム人学生を受け入れる学校には外国資本に関する制限が存在し、たとえば就学前教育では外国のカリキュラムが全体の50%を超えてはならないなどの規定がありますが、主に外国人学生を対象とする全額外資系のインターナショナルスクールは設立可能です。教育レベルによって最低投資額の要件も異なり、高等教育機関や大学の分校については、教育の質と持続性を担保するために、特に高い資本基準が設けられています。そのため、ライセンス取得、カリキュラム承認、各種コンプライアンスの要件を適切に理解し、順守することが、スムーズな市場参入と継続的な運営において極めて重要です。

ベトナムの教育セクターは、若く活発な人口、政府による力強い改革、そして国際化と教育の質向上への明確なコミットメントにより、外国投資家にとって多様な機会を提供しています。
特に高等教育分野では、ベトナムは質、資本、運営能力に対する基準を引き上げる「選別的な投資受け入れ方針」を取り入れており、競争力があり、国際的に統合された持続可能なシステムの構築を目指しています。今後、ベトナムがインフラと投資政策の改善を進めるにつれ、この慎重かつ戦略的なアプローチは、優れた実績と長期的な教育ビジョンを持つパートナーをさらに惹きつけると期待されています。