ベトナムのファッション業界は、ダイナミックな変革の真っただ中にあり、市場参入や事業拡大を目指す投資家やブランドにとって大きなビジネスチャンスを提供しています。力強い輸出成長、若くて富裕化が進む人口、そして急速なデジタル化の進展により、ベトナムのファッション業界は消費者のニーズに応えるべく急速に進化しています。

ベトナムのアパレル・フットウェア小売市場の概況

アパレルおよびフットウェアは、ファッション産業の発展において重要な役割を果たしています。この分野は経済的に恵まれた背景を有しており、2025~2026年にはGDP成長率が6~6.8%と予測されていることに加え、都市化が進む若年層の人口が現代的な消費習慣を牽引しています。2024年のベトナムのアパレルおよびフットウェア小売市場は約45億米ドルと推定されており、2029年には約50億米ドルに達する見込みです。国内経済の成長と消費者嗜好の変化に伴い、ベトナムのアパレル小売市場は安定した成長、急速なデジタル化、そして持続可能なファッションへの需要拡大が見られます。

ベトナムのアパレル小売市場を牽引する主要トレンド

  1. ベトナム人消費者におけるファッション検索の傾向

  • 現地のブラウザ「Coc Coc」のデータによると、ベトナム人消費者のファッション検索において、男女ともに「衣類」が最も検索されているカテゴリとなっています。ワードローブの必需品であるパンツ、シャツ、スカート、ドレスといったアイテムは、女性のファッション検索の84%以上、男性では53%を占めています。
  • 性別によって、次に人気のある検索項目は異なります:
    • 女性の場合:靴、サンダル、スリッパなどの「フットウェア」が検索全体の12%を占めています。
    • 男性の場合:財布、ベルト、ネクタイ、蝶ネクタイ、靴下、帽子、バッグ、バックパックといった「アクセサリー類」が27%を占めています。
  • インターネット上で最も検索されたキーワード:
    • アパレル関連では、「Tシャツ」「ポロシャツ」「ジーンズ」がトップ検索ワード。
    • アクセサリー関連では、「腕時計」「ハンドバッグ」「サンダル」がよく検索されています。
  1. ラグジュアリーブーム、ファストファッションの急成長、ローカルブランドの再構築

ベトナムのアパレル市場は非常に多様で、急速に進化を遂げています。ラグジュアリーファッションは絶好調であり、2024年にはHermès(エルメス)、Piaget(ピアジェ)、Cartier(カルティエ)などの世界的ブランドが、都市部の富裕層からの需要増加に対応するために目立った拡大を行いました。この勢いは今後さらに加速すると見られており、中間層の台頭によって「憧れのラグジュアリー」を求める購買層への移行が進むと予測されています。一方、ユニクロ、H&M、Zaraといったファストファッションの大手ブランドは、都市部の若者の間で急速に支持を集めており、短いトレンドサイクル、大胆なプロモーション(最大90%の割引など)、戦略的なショッピングモールへの出店によって市場を席巻しています。特にユニクロは、売上と店舗数の両面で著しい成長を見せており、2024年末時点で全国に29店舗を展開し、都市部での存在感を大きく強化しています。

大手の国際ブランドが好調な業績を上げる一方で、近年ベトナムのファッション業界では、「メイド・イン・ベトナム」ブランドの著しい台頭が見られ、国内外の注目を集めています。しかし、ローカルブランドの数が増える中で、すべてのブランドが独自性と品質を維持できているわけではありません。現在の市場は、国際的な評価を獲得する新進気鋭のブランドと、国内外の競合の激化により苦境に立たされる老舗ブランドという、2つの対照的なトレンドに特徴づけられています。

  • そのような業界の変化の中で、創造性に富んだトレンド重視のデザインと高品質な商品づくりに取り組む新世代のベトナムブランドが台頭しており、国内外で注目を集めています。たとえば、LSOUL、FANCì Club、Blanke Spaceといったブランドは、国際的なセレブに着用されるなどグローバルな認知を獲得し、海外市場への展開も進めています。

      LSOUL worn by Katy Perry
  • しかしながら、このような革新の波とは対照的に、多くの老舗国内ブランドはますます深刻な課題に直面しています。国際的な大手ブランドとの競争激化に加え、運営コストの上昇や時代遅れのブランドイメージが重なり、Lep’、CATSA、IVY Moda、Elpis、Giianといったブランドは、2024年に規模縮小や市場撤退を余儀なくされました。現在の市場環境においては、高コストを伴うブランド刷新が持続可能でないケースが多く見受けられます。
  1. サステナブルへの推進

サステナビリティは現在、業界の最前線にあり、製造業者と消費者の双方が、環境に優しいリサイクル素材や革新的なエコ素材をますます支持する傾向にあります。ベトナム政府が掲げる「2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ」という目標に加え、環境意識の高まりと消費者の嗜好の変化が、グリーンファッションの導入を加速させています。これに対応する形で、Yody、An Phuocなどのローカルブランドは、リサイクルプラスチックやオーガニックコットンなどの環境配慮型素材を使用したコレクションを展開しています。

  1. Eコマースとライブコマースの急成長

Eコマースは、ベトナムのアパレル小売市場において変革をもたらす力となっています。2024年末時点で、小売Eコマースはアパレルの売上全体の27.5%を占めました。ベトナム全体のEコマース市場は2024年に250億米ドルを超え、その中でもファッションとアクセサリーが売上の主要カテゴリとなっています。

Shein、Taobao、Shopeeといったプラットフォームは、ファッションへのアクセスを民主化し、消費者が中国から最新トレンドの商品を直接購入できるようにしました。多くのTaobao販売者はShopee上にもオンラインショップを開設しており、またTaobaoプラットフォーム上でもベトナムへの直送オプションを提供するなど、越境ファッション消費をさらに加速させています。

こうしたオンライン小売の急成長により、多くの国内アパレル小売業者がデジタルプラットフォームを活用してより広範な顧客層にアプローチし、グローバルブランドとの競争力を高めています。

結論

ベトナムのファッション業界は、世界的な需要、テクノロジーに精通した消費者層、そしてサステナビリティへの取り組みによって、大きな変革の岐路に立っています。市場は、デジタルイノベーション、グリーン投資、そして政策の強力な後押しによって急速に進化しています。